ふくしまマイスター 第4回「書道マイスター」
マイスター特集 第4回
「書道マイスター」 書家・陽華(ようか)さん
2013年 ニューヨーク福島祭
“福幸”の願いがこめられた福魂祭
古典の臨書
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福島を想ってかいた作品
飯館村の仮設住宅のみなさんの前で
◆営業の仕事が、今のベース。
大学で書道のコースに行きました。就職を考えた時、みんな教職を取ったりするんですけど、もともと文房具マニアで(笑)、自分の字を商品で売りたい・自分が書いたものが売れたらいいな。と思っていたんです。卒業後はスタンプのメーカーに入社したんですけど、その当時デザイン職はいっぱいで、営業職だったんです。外回りしたり、デパートなんかで年賀状のハンドメイドツールのデモンストレーターをしながら接客をしたり。今の仕事でも、どなたかに贈る言葉を書くっていう時、その方の好きな言葉とか、色とか、音楽とか、いろいろお話ししながら、そこから受けたインスピレーションで書くんですよね。だから、その人にしか作れない物をご提案するっていう部分のベースは、営業の時にあったのかもしれないです。
◆「自分らしさ」にこだわるためには。
作品へのこだわりは…なんだろうな…「自分らしさ」なのかな。自分らしさを出せるように。うまく書こうとかじゃなくて。でもそこに行くためには、古典というか、ベースの勉強も見えないところできちんとしつつ。ただ何にもなく自由にやってるわけではなく、昔から引き継がれている字の歴史も勉強する。自由にやり過ぎたら今度は古典をやって、っていう繰り返し。もちろん、漢字の成り立ちを無視しない。そこはもちろんベースにあって、そこからまた自分を出していく。新しいことをやりつつ古いことの繰り返し。古典ばかりだとまたおもしろくないし、自分にしか出せないもの、想いとか、大事ですよね。
◆言葉が、降りてくる。
自分の詩を書く時に、急に言葉が降りてくることがあるんです。以前は個展の前になると、どうしよう!どうしよう!みたいな焦りがあったけど、でもその、どうしよう!どうしよう!っていうのがいっぱいあった結果、自分を信じてればちゃんとタイミングよく降ってくる!と思って。その時の出会いだったり景色だったり、何気ない友達との会話だったり、その中にひらめきのワードは必ずあるので、そのワードが教えてくれるイメージから、自分で広げていくっていう感じですかね。書を始めた高校生の時、バンドが大好きなんだけど、自分は楽器を弾けないっていうのはわかってて、そんな時に書いたのが、今までみたいな上手に書く作品とは違って、自由な作品。白い紙がステージで、そこで奏でてる。筆が踊ってる、筆が鳴らしてる、っていうイメージ。自分の中で「奏でたい」という意識があって、書くときは音楽をイメージする部分が大きいかもしれないですね。
◆「書く」というより、「書かされる」。
震災の後、飯館村の皆さんの前で書かせてもらう機会もあって。会場の方達が泣いてるのも見えるし、自分でもあふれてくる想いがあって、書くっていうか…あれは多分書かされてたんですよね。一人で書いてるんじゃない。書道って、見えないところでやった作業を出すものなんだけど、そうじゃなくて、パフォーマンスという形で書く姿を見せたことによって、人を元気づけられたり。だからこういう表現のしかたもあるんだなって思ったりしました。
昨年ニューヨーク福島祭に参加しました。全然英語が話せなくて不安はありましたが、福島の想い、自分の想いを伝えたいという気持ちでステージに立ちました。書こうと思ってた言葉は一気に吹っ飛んで、気が付くと全く違う言葉を書き鳴らしていて。きっとその時の会場で何か降りてきたんでしょうね(笑)ニューヨーカーからたくさんの拍手を頂いた時、言葉は通じないないんだけど、想いは通じたって実感がありました。書は言葉を書くんだけど、言葉を越えたくて言葉を越えたなにかを表現していけるようになりたいです。
◆想いをこめて、書く。
お寺で戒名を書く時に、ただ書くんじゃなくてきちんと拝みながら書くっていうのを住職からご指導頂いたんです。「想いをこめて書く」っていうことを意識しだしてからまた変わりましたね。最初の頃って、勢いで書いてたりする部分があったんですけど、そうじゃなくて、書いて、書き放ったこの言葉に筆をとおして想いをこめようって意識してます。一部の小中学校の卒業証書も書かせて頂いてますが、名前一画一画に、一人一人の学生時代の思い出と卒業の証しと刻むように書くように心掛けました。これは、作品を書く時にも、一筆一筆、そんな気持ちで表現していきたいです。とはいえ、気がつくと無になっちゃってたりして(笑)それはそれで、よしとしつつ…。
まだまだ ひよっこですが、自分なりにマイペースに少しづつ成長していきたいです。
陽華さんの作品の一部をご紹介します!!
成人式のライブパフォーマンス“SHINSEIJIN NI OKURU MESSAGE”
日本酒「山五」のラベル
福島ロッカーズのCDジャケット“DAY OF FUKUSHIMA 3.11-3.12”
言葉だけではなく、絵も描かれるそうです
中学校の先生よりオーダー頂いて担任の生徒さんの全員に名前を書いた卒業のお祝いプレゼント
【取材後記】
陽華さんは一言でいうと、おひさまのような人。
想いをこめて書いた作品からはもちろんのこと、ご本人からも明るく前向きなパワーを沢山感じました。自分らしさを大切にして、自由に筆を動かしながらも、その根底にはしっかりとした礎がある。できそうでなかなかできないことなんじゃないかなぁと思います。作品を作り上げるために何枚も何枚も書いて、その中からこれだ!と、世に出す1枚を選ぶのにいつも悩んでしまうという陽華さん。真摯な姿勢が感じられました。
作品づくりだけではなく、個人レッスンやワークショップ、また、アクセサリーづくりなどもやっていて、今後は大人も子供もその瞬間瞬間を楽しめたり、福島のつながりが広がるようなアート展などもできたらいいな。と話してくれる陽華さんの言葉ひとつひとつが、とってもキラキラしているのが印象的でした。